■コケ緑化を導入した経緯
まず、このたびはコケ緑化プロジェクトに快く賛同していただいた上に、このような会にご出席いただき、ありがとう
ございます。松田社長、川原局長とは高校の先輩後輩という間柄でもありますし、今日はざっくばらんにお話ができればと思いますのでよろしくお願いします。
最初に、お二方がコケ緑化を取り入れていただいた経緯から改めてお話いただけますか。
うちの幼稚園では、以前から園舎の夏場の暑さ対策を考えていました。やはり今年の夏のような猛暑に、園児たちを
暑い教室にいさせるのはかわいそうだし、健康を害さないとも
限りません。
しかし基本、幼稚園は伝統的に扇風機を置かないところ。折り紙をすると風で飛ばされるし、万が一、園児が手をはさんだりしたら大変なことになる。クーラーを
設置するにしても、つけた方がいいという意見がある一方で、小さいときからクーラーづけだと体の弱い子になってしまわないかという意見もあり、そう簡単にはいかない。そんなときに、塩谷君からコケ緑化の話を聞いて、
自然の力で少しでも暑さをしのげるのならばとすぐに着工可能な第二幼稚園で試験的に導入したというのが経緯です。
塩谷:決め手になったのはどこでしたか。
コケ緑化のよさは、エネルギーを使わずに温度(暑さ)をやわらげること。
施工が早く、管理も容易なので、園の活動に大きな支障を来すこともない。何より、園児たちの健康面、安全面で安心できるものだということです。
でも実は、塩谷君からさんざんコケの話を聞かされ、根負けしただけかもしれない。
恐縮です。では続いて松田社長、お願いします。
きっかけは店舗の改装工事です。
これまで事務所にしていたデュプレックス店の3階を売り場にする工事で、当初、内装だけの簡単なもののつもりが、建物の法律上の問題で、床・壁・天井など躯体以外すべてやり直すことになった。
それで、全部建て替えるならこれまで以上に付加価値のある建築にしたいと思い、建物の再生工事をした上で、屋上と外壁にコケ緑化をすることにしました。
塩谷:もともと、屋上には太陽光パネルを設置するはずだったんですよね。
発電する建物にしようと思って、以前、他社から見積りも取っていました。
しかし、発電量を算出してみると、この建物の屋上面積では投資に対して思うほど電力の供給が伴わないことが分かり、他のことを考えようと思っていた矢先に、川原君と同じで、塩谷君からコケ緑化の話があったんです。
顔を合わせるたびに、コケコケとあんまり熱く語るんで、これも縁(えん)だと思い、やってみるかってことになりました。
もちろん、うちの店にコケを敷いたからといって、環境が激変するとか、
地球が救われるとか、そんなことは全く思っていません。
第一コケなんて昔からあるものだし、今だって古い寺とかにいけば生えている。そのコケを使って、屋上を緑化しようなんて、面白そうじゃないですか。自然を破壊し、今少なからず地球環境に異変が起きている。
塩谷君が言う「なくしたものを取り戻さなければいけない」というのは、僕もその通りだと思う。だから一民間企業として、利益とか関係なく、ちょっとやってみようと思ったんです。
塩谷:店舗の改装にあたって、ゼロからの建て替えではなく、再生工事を選んだことにも理由があるんですよね。
ファッション業界では今、リメイクなんて言葉が流行っています。
たとえば、もう着れなくなった古着をバックにリメイクしたり、昔の着物で洋服を作ったり。そうすればゴミは減るし、リメイクしたものには付加価値がつく。
建物もそれと同じだと思うんです。食品はムリだとしても、衣食住の衣と住についてはそれが可能でしょう。
一般に建築業というと、ある期間がくると建物を全部壊して、更地にしてしまうのがこれまで常識だったと思う。
でも、せっかく建てたものを全部取り壊してしまう必要があるのか、外国から資材をどんどん輸入してまで新たに建てる必要があるのか、という話ですよ。だって、使えるものは使えばいいし、再生できるならした方がいいじゃないですか。
だから今回の店舗の改装では、外壁から内部の什器類にいたるまでできるだけ以前のものを再利用し、再生工事をしました。でも、こっちの方が案外手間だったりするよね。
そうですね。より慎重に解体しますし、耐震補強なども必要です。
でも、それによってゴミを減らし、資源を有効活用でき、建物の寿命も長くなります。松田社長のおっしゃる通り、再生可能な建物については、強度など十分調査した上で、再生したらいいと思います。